*** ちょっとした心霊現象 ***
俺、中学生。
悪友から借りたHビデオを、
親が寝静まったころ、居間にあるビデオデッキにそぉーっと差し込む。
親は起きてこないか?
ちょっとした物音にも敏感な親父の寝息を確認。
普段は大して気にならない、ウィーンガシャッという音がやけにでかく感じる。
もうちょっと静かに入りやがれ、このやろう!
音が漏れるといけないため、イヤホンをテレビにセットし、片方だけ耳に差し込む。
もう片方の耳は、親が起きてこないかどうかの確認という重要な任務を背負っている。
心臓をバクバクさせながら、初めてのHビデオの再生ボタンに指を乗せる。
エロ本からのステップアップ。
大人への階段を確実に一歩降りる登る。
再生ボタンを押す指に力を入れようとしたその時、突然、誰かの視線を強く感じる。
ふと横を見ると、テレビの横には親父お気に入りの漆塗りの高級仏壇が。
仏壇の扉の奥には、神々しく輝く黒金の位牌。
俺、このまま再生ボタンを押す気になれず、イヤホンをはずし、仏壇の前でひと拝み。
言い訳じみたことをブツブツつぶやき、仏壇の扉をそぉーっと閉める。
再びテレビの前に座り、イヤホンを片方装着し、再生ボタンをおもむろにプッシュ!
ビデオ「ウィィーン」
母「お兄ちゃん!? 起きてるの?(寝室から)」
まき「!?」
母「早く寝なさいよ。」
まき「ちょちょッ・・・ちょっと天気予報を・・・。」
俺、安全を期して今日のところは一時退散。
もやもやした気持ちを抑えつつ、ビデオを取り出し、部屋に戻る。
次の日の朝。
毎朝、仏壇のお供え物を取り替えるのが日課の親父が、
先祖思いの親父「誰か仏壇の扉閉めたのか!?」
俺、扉を閉めたナイスな理由が全くもって見つからず、終始とぼける。
しばらくの間、まき家が体験した、
ちょっとした心霊現象ということに。
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