私は中学時代、必死で勉強した。
とくに英語と数学。
中間試験や学期末試験で、誰にも負けたくなくて、必死で勉強した。
寝ている時間も惜しんで、一生懸命勉強した。
そしてついに、
文字通り寝ている時間を惜しんだ。
「睡眠学習マクラ」というきわどいものを、親にすがりついて買ってもらった。
当時流行っていた「BOMB!」だとか「SUGAR」とかいったエロ本の最終ページに、
『私はこのペンダントでモテモテになりました』
みたいに広告しているものと同じ類(たぐい)のきわどいアレだ。
そのマクラの説明書によると、
「人間は眠っている間、常にレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しており、
レム睡眠時は、体は眠っているにも関わらず脳は覚醒状態にある。
このとき脳波を検査すると主にα波が占めており、
脳の集中力や記憶力が一番高く、
最も外部からの影響を受けやすい状態である。」
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だそうだ。
カセットテープに覚えたい英単語や数式を吹き込み、マクラにセットして、
聞こえるか聞こえないかぐらいの微妙な音量に調節する(これ大事)。
そしてそのマクラに頭を乗せてスイッチを入れ、眠りにつく。
するとアラ不思議。
朝起きたときには、何回ノートに書きなぐっても覚えられなかった英単語や数式が、
見事にペラペラスラスラと出てくるそうな。
こ・・・これはイケる!!
次の試験では、いつも争っていたライバルたちも、
俺の成績にビックリ仰天に違いない!
なんたって俺は、寝ている間も勉強しているのだから。
さっそく私も、
なかなか覚えられなかった難しい数式(底辺×高さ÷2とか)をいくつかカセットに吹き込み、
聞こえるか聞こえないかぐらいの微妙な音量に調節して(これ大事)床につく。
シーンと静まり返った勉強部屋。
耳を澄ますと、マクラの奥からかすかに聞こえる数式たち。
脳からα波が放出し、感覚が研ぎ澄まされ、
記憶力と集中力が少しずつ高まっていくのを肌で感じる。
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ようこそ俺、レム睡眠の世界へ
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まき「俺の声って、変な声だなぁ・・・。」
ムニャムニャ・・・(レム睡眠中)。
まき「ん? 今なんつった?」
ムニャムニャ・・・(レム睡眠中)。
まき「ププッ、俺、今噛んだよ・・・。」
ムニャムニャ・・・(レム睡眠中)。
朝起きたときには、
聞きにくかった箇所とか、噛んだ箇所とかを、
かなりしっかりと覚えていた。
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