我が家の車事情に、大きな転換期が訪れた。
借金のカタに 経済的な理由により、シビックとインテグラのどちらかを売却し、
彼女と2人で残った1台を共有することに決定したのだ。

彼女「HCOCのこともあるし、事故でもない限りシビックを売ることはできないでしょ?」
まき「・・・。」
彼女「わたしもインテ好きだけど、今回はインテの方を売ることにするよ・・・。」
まき「マ・・・マイラバーよ。」
うちのチームのメンバーがシビックやCR−Xを乗り継いできたのと同じように、
代々のインテを乗り継いできたインテグラファンの我が彼女。
丸目インテということで、石田くんのバンパーとリアウィングをかっぱらって、
いつかは本格的なスポコンに・・・なんて意気込んでいただけに、
その決心はいかばかりのものであっただろうか。
まさに彼女の鏡である。
そんなとき、ワイン3本片手に我が家に遊びに来ていたコイケさんが一言。
コイケ「ちょっとちょっとぉー!」
コイケ「残す方は通勤メインで使うんでしょぉ!?」
コイケ「100人いたら99人はあのシビックの方売るわよぉ!ウィー」

許しがたい一言だが、泥酔中でどうせ覚えちゃいないだろうということで、
ここはひとまず怒りを抑えることにして、
最終的には、やはりインテの方を売却するという方向で考えることに決定した。

6月に車検が切れるため、できれば5月中に売りたいということで、
売却の相場が分からない私は、まずはうちのメンバーに相談してみようということに。
まき「うちのインテ売れるかな?」
山崎「DC-2 SiVTECだよね、希望額は?」
まき「10万くらい。」
山崎「うーん、難しいね。車検もないんでしょ?」
石田「最悪、マイナスもありうるよ。ゼロ査定が普通で、良くて2、3万くらいでは?」
まき「そ・・・そうなの?」
石田「それにほれ、バンパーの大きな傷も目立つしさ。」
一緒にインテのバンパーを補修したときは、2人で「完璧だ!」なんてほざいていたくせに、
今になってよく言えたモンである。
距離数が少ないとはいえ、年式的にはゼロ査定が普通
という2人の意見に耳を塞(ふさ)ぎつつ、
「実際に見てもらわなきゃ分かるもんか」という微(かす)かな希望を胸に、
ある晴れた休日、近場の大手買取ショップに足を運んでみることにした。

何社か買取ショップを回って、一番高い査定を出したところに決定しようってなことで、
まずは一番近い某うさぎ系買取ショップへとインテを走らせる。
今日でこの車ともお別れかもしれないと思うと、
アクセルを踏み込む感触も感慨深い。
もっとVTECを遺憾なく発揮させてやればよかった、この車でサーキットを走りたかった、
いっぱい磨いてやればよかった、ああすればよかった、こうすればよかった・・・。
HCOC北海道の会長という立場でシビックを所有しているにも関わらず、
不謹慎にもシビックとCR−Xの集いに半年間インテで通った男だけに(シビックは雪に埋まった)、
その思い入れはメンバーの方々なら分かっていただけるかと思うが、
今までの色々な思い出や後悔が走馬灯のように頭を駆け巡る。
店に到着したところで、
「俺の車見てくれや、ゼロ査定なんて言いやがったら承知しねーぞ」
といった態度でおもむろに入り口のドアを開け、ドカッとソファーに座り込む。
最初にナメられてはイカンのだ。
いかにも新入社員といった感じの若い店員がこう質問する。
店員「車検証はございますか?」
まき「おぅ、あるよ。」
店員「事故歴はございますか?」
まき「ねぇーよ、んなもん。」
そつなく事務処理をこなしたところで、
査定のキモ、実際の車チェックである。
店員「それではお車を拝見します。」
まき「な・・・何卒よろしくお願いします!」
ゴマをするのも必要なのだ。
店員「うーん、左前のフレームがちょっと歪(ゆが)んでますねー。」
店員「お客様ではないと思いますが、事故歴はありますねー。」
店員「夏タイヤとオーディオは無しですねー。」
店員「バンパーがちょっとねー。」
ある程度予想はしていたが、
査定において、車のアピール箇所やいいところなどは大して見やしないのだ。
悪いところをネチネチとついておいて、
だからこの値段にしかならないのよ、というのが通常の査定なのであろう。
店員「以上を踏まえました上で・・・。」
店員「うちでお出しできる金額としましては・・・。」
まき「(ドキドキ)・・・。」
店員「がんばって70,000円です!」
まき「!?」
おぉ、意外と高値ではないですか!
石田くんや山崎さんにゼロ査定と言われ、
自分が買取業者でも出して3万くらいだなと思っていただけに、
この査定には正直ビックリである。
しかし、ここで簡単にほくそ笑んではいけない。
まき「あぁーん!? 70,000円!?」(←いかにも不満そうな態度)
店員「えぇ、それ以上ですと、ちょっとうちとしては・・・。」
まき「とりあえずさ、他も回って、そこよりも高ければおたくに決めるよ。」
店員「えッ・・・他?」
まき「そう他の買取業者。」
店員「他と言いますと・・・ガ●バーさんとかジャッ●さんとかでしょうか・・・?」
まき「そうね、そのつもりだけど、ダメ?」
店員「いや・・・あの、できればうちで・・・。」
まき「ヤダよ。他にも見てもらわないと。」
店員「じゃ・・・じゃぁ、4、5月分の税金はうちで持ちますから、なんとか!」
入社したてと見えるこの若い店員、インテを逃したくない一心で必死の頼み込みである。
「もっと高く買ってくれ」とこちらが頭を下げる状況を予想していただけに、
私としては、この予想外な状況の到来はかなりラッキーである。
私の高飛車にも拍車がかかる。
店員「できる限りの誠意を見せますから・・・なんとか!」
まき「あののー、おたくに示せる誠意って金額以外に何があるの?」
店員「いや・・・あの・・・。」
まき「だから他の店よりも提示金額が高ければさ。」
まき「誠意を見せたってことでおたくにしようって言ってんじゃないの。」
店員「実は・・・ぶっちゃけて言いますけど・・・。」
店員「今月のノルマがもう少しで、達成できないとかなりヤバいことになるんです・・・。」
そんなことを俺に言ってどうする。
しかしよく考えてみると、月末に来たというのはこれもまたラッキーだったのかもしれんな。
この業界やこの店のシステムはよく分からんが、
少なくともこの店員には、
ノルマのためにはある程度の自腹も辞さないという覚悟も見えて取れる。
店員「お客様が他の業者さんに行かれるとするじゃないですか。」
店員「そしてうちよりも出せるってことになると、こちらとしてもまた上げざるを得ない。」
店員「そうすると、業者同士のイタチごっこになっちゃうんですよー・・・。」
まき「それが俺の狙いだもん(ズバリ!)。」
店員「ハ・・・ハハ・・・そうですよね・・・。」
だいたいだな、新人くんよ。
社会人の先輩として偉そうに言わせてもらうとすれば、
ノルマがやばいだの個人的な情に訴えるような営業をしていたのでは甘ちゃんのままだ。
これを試練と思って大きくなるのだ、若人(わこうど)よ。
ホレ、もっと査定を上げるのだ、他の業者に行っちゃうよ。
ホレホレッ。
俺の高飛車、極まれり。
ネチネチと新人くんを困らせた挙句、結局他の業者も回ってみるということに。
新人くん「今日、夜までずっと待ってますので、何卒うちで・・・。」
深々と頭を下げる新人くんを横目に、インテを再び走らせる。

彼女「なんか可哀相になってきちゃった。あそこでもいいんじゃない?」
まき「情に流されたらのー、高く売れなくなるぞ。」
彼女「そりゃぁそうだけどさー、かわいい顔した子だったし。」
まき「悪くはしないだろうから俺だって彼に預けたいけどな。」
そんなこんなで2件目の某買取ショップに到着。
ここは、規模が小さく店員も少ないから仕方がないのかもしれないが、
数少ない店員が我々よりも後に来店した車購入客の対応に必死。
30分以上、油の浮いたコーヒーだけで待たされてなんか気分が悪いが、
これから始まる俺の高飛車を考えると、まぁそのくらい我慢しよう。
ようやく車の査定に入り、提示された金額は30,000円。
これでもがんばったほうだと言う。
そうかもしれないが、これでは最初の新人くんとのイタチごっこをさせてあげられない。
チッ、時間の無駄だったとばかりにそそくさと店を出て、いざ3件目。
ここでの提示金額も30,000円。
誠意なさそうな店員「一番高く付けたところはいくらでした?」
まき「70,000円だけど・・・。」
誠意なさそうな店員「えぇー!? その業者、ちゃんと査定してました?」
まき「はぁ?」
誠意なさそうな店員「いやぁ、事故歴とか見落としてるんじゃないのかなぁ・・・。」
まき「・・・。」
あのよー、名前は言わないけど、
その業者はしっかりと査定をしてしっかりと誠意を見せてくれたよ。
時間だけで言うと、おたくの2倍は舐め回すようにチェックしてたぜ。
それをなんだよ、おたくときたら・・・ピーチクパーチク・・・。
急遽、新人くんの味方決定である。
うちのインテだけにケチを付けるならまだいいが、
商売敵かなんか知らないが、他の業者の悪口までポンポン飛び出してきて、
それを通してインテにケチを付けられているようで、
ニヤニヤ笑いながらたたずむその店員の顔を見ているだけでむかついてきたので、
もう用はないってことで速攻で運転席に乗り込む。
誠意なさそうな店員「ボンネット開けてもらえます?」
誠意なさそうな店員「例えばココとかはですね・・・。」
誠意なさそうな店員「ホレ、見てください、この傷・・・。」
まき「もうええっちゅーねん! どけッ!」

なんだなんだ・・・1件目の新人くん、いきなり誠意見せてくれてたのかよ。
何件回っても同じかなぁ。
やっぱりノルマに必死は強しってか?
次でダメだったら、
「おたくの誠意に負けた」とか何とか言って最初の業者に戻ろうかなってなことで、
いざ、業界最大手である某巨人物語系買取ショップの門をおもむろにノックする。
百戦錬磨といった感じのベテラン査定士にインテを舐め回され、
不安げに見守る我々に彼が一言。
ベテラン査定士「他のところでいくらでした?」
また他の業者の悪口か?
まき「70,000円ですけど・・・。」
ベテラン査定士「うちは80,000円出します。」
まき「!?」
きたきたぁーッ! イタチごっこがんばれー♪
まき「・・・(タバコに火を付け、スパァーッ)。」
まき「あのさぁ、70,000円出したとこ、最低で・・・って意味でさぁ。」
まき「他のとこより10,000円プラスするって言ってんだけど。」
まき「そっちが90,000円って言ったら決めちゃっていい?」
ベテラン査定士「90,000円・・・ですか・・・? うーん。」
ベテラン査定士「分かりました、そのときは諦めますよ、クックックッ。」
なんだ、いやにあっさり引き下がるではないか。
ノルマはないのか? ノルマは。
月末だよ、オイ。
とりあえずは新人くんに確認をってなことで、店の外に出て、
彼からもらった名刺と携帯をポケットから取り出す。
ふと気が付くと、
私の携帯の着信履歴には、彼の名刺に書いてある携帯番号がしっかりと刻まれている。
ははぁーん、さては気になって電話してきたのだな?
新人くん「で・・・どうでした?」
まき「あのね、80,000円出すってさ。」
新人くん「えぇー!? それはきついなぁ・・・うーん。」
まき「どうするよ、決めちゃうよ。」
新人くん「まきさん、あのね、うちが90,000円って言ったら、即決してくれます?」
まき「ほぅ、なかなかじゃない。」
新人くん「もうさっきみたいに上司に相談とかなしで、僕の裁量で決めますので・・・。」
たぶんこの子、ある程度の自腹をほぼ覚悟である。
まき「90,000円ねー・・・税金分は?」
新人くん「えッ・・・税金分ですか?」
まき「今、他の業者のとこにいるからさ、そっちまで戻るのめんどくさいんだよねー。」
新人くん「ムムムム・・・分かりました。手元に90,000円ってことで。」
店内に戻り、不適な笑みを浮かべるベテラン査定士にその旨を報告する。
まき「・・・ってなことで、90,000円出たんでそっち行きますわ。」
ベテラン査定士「90,000円ですか、参りましたなー、クククク。」
新人イタチに比べ、
酸いも甘いも知り尽くしたようなこの老イタチの余裕ぶりは何かしら不気味だが、
とりあえずは当初より20,000円ほどアップしたということで、
ベテラン査定士にお詫びを言い、店内を出ようと出口のドアをおもむろに開ける。
いったんは「またどうぞ」と深々と頭を下げたこの老イタチ、
ゆっくりと頭を上げるや否や、不気味な声で、
ベテラン査定士「まきさん・・・120,000円で・・・いかがでしょうか?」
まき「!?」
じゅ・・・120,000円!?
切り札のエース出してきよったで。
最大手のプライドか、はたまた裏ルートか?
言うわけないだろうけど、最初からそう言わんかぇ!
ベテラン査定士「この場で速攻で決めてくれたら、この値段で手を打ちます。」
ベテラン査定士「もちろん、他の業者に相談せずに・・・ですよ、クックックッ。」

荷物の整理とかがあるので、車は明日引渡しということで、無事契約も終了。
まき「わりぃ、120,000円で決めちゃったよ、ごめんねー。」
新人くん「じゅ・・・120,000円ですか?」
なんだ、なんだ?
まさか130,000円とか言うつもりなのか?
新人くん「チッ、分かりましたよ(ガチャッ、プーップーッ・・・)。」(←この切り方は誠意なかった)
吸ったり揉んだりで一日中駆けずり回った買取ショップツアーであったが、
石田くんや山崎さんのゼロ査定や自分の予想を遥かに上回り、
今までインテにお世話になった恩に報いることが出来たような気がして大満足。
自分がイタチどもを操ったのか、
私と新人イタチが老イタチにたぶらかされたのかは分かる術(すべ)もないが、
今となってそれを知っても後の祭りなので、これでよかったのだ。
彼女「私だったら、最初に30,000円とか言われたら、それでOKしちゃってたなぁ。」
彼女「私も嬉しいけど、がんばってくれたから、インテが一番喜んでると思うよ。」
最高の褒め言葉である。
メンバーの方々も、
乗換えや手放されるときはそれぞれに感慨深い思いをされてきたのかもしれないが、
私も次の日にインテを預けに行くときは、
はっきり言ってドナドナの心境が痛いほど分かった。
かわいい4つの丸目で、「もう一度乗ってほしい」と語りかけているような気がした。
果たして、私がシビックを降りるときは、
一体どれほどの思い出が頭を駆け巡るのであろうか。
来るべき日はそう遠い未来ではないかもしれないが、
今はただ、たくさんの思い出をくれたワインレッドの丸目インテに、
ありがとう、おつかれさんの一言に尽きる。

「オイオイ、ここはシビック&CR−Xのサイトだぞ」というご意見はジャロまで
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